HANDS-FDF (Faculty Development Fellowship) - 家庭医療指導医におけるうつ
Depression in Family Medicine Faculty
Anthony J. Costa, MD; Susan Labuda Schrop, MS;Gary McCord, MA; Christian Ritter, PhD
(Fam Med 2005;37(4):271-5.)
まとめ文責:八藤英典
【背景と目的】↑
家庭医療学の指導医のうつ病は、患者のケアの低下、教育効果の低下、さらに、転職につながる。この研究では家庭医療学のレジデンシー・プログラムの指導医におけるうつ病の有病率と関連する危険因子を同定した。
【方法】↑
2000年10月の時点で、STFM(Society of Teachers of Family Medicine)のメンバーとして記載されている全てのフルタイム勤務の家庭医療学の指導医、プログラム・ディレクター、そして、行動科学者を調査した。調査項目は、人口統計、診療の特徴、Beck Depression Inventory U、Social Readjustment Rating Scale(SRRS)、そして、レジデンシー・プログラムにおけるストレスを測定するスケールである。
【結果】↑
調査は1,418名の指導医に行われた。その中の7%が軽度のうつであり、5%が中等度から重度のうつであった。7%はSRRSにて高度のストレスを示していた。うつ病の重要な予測因子は、単身者、マイノリティー(underrepresented)、ストレススコアの増加、そして、教育により多くの時間を使っていることであった。
【結論】
プログラム・ディレクターや部門の長は、指導医のうつ病の有病率について知る必要がある。それは、患者ケアの質や教育の責任に影響を与えうるからである。
【コメント】
うつ病の重要な予測因子として、単身者というのは、自分の経験と一致していた。指導医ではないが、研修医をみていて、既婚者はより安定しているように感じていたからである。また、教育により多くの時間を使っていることというのは、私自身、参考になった。初期研修医の教育に関わっていると、負担感が大きくなるのは否めず、我々の施設でも後期研修医と分担して、初期研修医の教育に当たるようにしている。この2つは、すぐにでも、自分の施設で注意できる項目であると思われた。
不十分に表示された(underrepresented)少数グループというのは、よくわからなかった。ストレススコアの増加というのは、実際に、スコアをつけてみないとわからない。
また、私自身、年齢の若さや経験の少なさがうつ病の予測因子となると思われたが、この論文の結果では出てきていない。これは、対象がSTFMのメンバーであったためと考えられる。日本の家庭医療の分野はHANDS-FDFに参加しているメンバーを見ても、若い人が多いので、日本の指導層におけるうつ病の予測因子を知りたいところである。
コメント(岡田)↑
まだ指導者層が少なく、彼らの仕事量が過度の負担になりやすい日本の状況でこのようなことを知っておくことは非常に重要である。anecdotalなデータでは米国の家庭医療プログラム責任者の平均在任期間は2年程度といわれており、その短さの一つにはその役割の大きさとストレスが関係している可能性は十分ある。
結果についての補足
使用された評価スケールの中で
25-item survey developed by the Department of Family Medicine Office of Research based on interviews and discussions with family physicians from hospital-based family medicine residency training programs.
出典が書かれていないが、table2のストレッサーが25項目なので、おそらくそれぞれについてストレスの程度を5段階評価するものだと思われる。日本でも流用可能なのではないか
BDI-II の結果では
7% (98/1,404) scored as mildly depressed (score of 14−19), and 5% (67/1,404) scored as moderately to severely depressed (score of 20).
ということで、7+5=12%が何らかのうつ状態ということであるが、様々な調査から一般集団におけるうつ病の罹患率が13%程度ということなので、指導医であることが鬱を生むのではなく、指導医も人の子(一般の人と同じ)ということなのであろう。(つまり一般の人と同じようにうつが存在するので、そのつもりで)
ストレッサーの上位3つとして
the amount of paperwork/bureaucracy required
time pressures between work and home
not enough time to do academics
が5点スケールの3以上であったが、自分の身を省みても全くその通りである。
プログラム責任者のうつと(有意に)相関する項目としてプログラムの安定性、ストレススコア、一般指導医のうつを予測する因子として、結婚状態(OR3.41)、少数派(OR2.65)、教育の時間、ストレススコアということで、もっともな結果である。
社会の中での役割が多いほど病気にはなりにくい等データを以前読んだことがある。(夫、親、上司、少年野球のコーチ、ボランティア等役割が多い人ほど生き生きしてるのは世の常)
社会の中で自分の肩書き/役割を表す言葉がいくつあるか考えてみよう。そして少ない人は、それを増やすような工夫を。
訳注:underrepresented minorityというのは、白人の多いプログラムでの黒人指導医、独身指導医が多数のプログラムでの既婚者など「その集団を代表しない」ひとびとのこと。
出典↑
abstract
http://www.stfm.org/fmhub/fm2005/abstracts.cfm?xmlFileName=fammedvol37issue4.xml
全文
http://www.stfm.org/fmhub/fm2005/April/Anthony271.pdf
