HANDS-FDF (Faculty Development Fellowship) - 医学部医学科におけるAO(態度評価)方式による入学者選抜
高知大学医学部では、平成15年度から一部の入学定員についてAO(態度評価Admissions-Office System)方式を導入。論文掲載時にその入学者が1年次を終了した段階で、この方式による入学者の追跡調査を行っている。 担当:麦谷歩
目的↑
知識(想起)偏重型ではなく、出生後の生育歴において長期間を要して形成・獲得された、医師となるのに基本的に不可欠な態度・習慣領域の能力を入学者選抜の段階で評価しようとしている。
背景↑
知識偏重型入学者の一部に見られた深刻な問題として、学習の能動的学習能力、自己課題設定型・自己問題解決型学習能力の欠如に起因する成人型学習に対する動機づけの低下が挙げられる。また、入学後における教育によっても、コミュニケーション能力、基本的態度、協調性などの態度・習慣領域に改善が認められない学生が少なからず存在し、これらの資質は入学以前の長年にわたる家庭教育および自己の努力により獲得したものであり、その厳密な評価は短時間の面接では不可能に近い。
方法↑
長時間にわたる態度・習慣領域の機能評価法を開発し、入学者20名を選抜。
- 一番の特徴は第三次選抜
- 第一次選抜:書類選考
- 第二次選抜:学力試験
- 第三次選抜:グループディスカッション、面接
- 第三次選抜内容:
*グループ学習による問題解決型適性能力・態度評価
シナリオを渡して、それに対する問題点の抽出、対応
策についてSGDを行わせ、その内容を発表させるとい
うプロセスを8時間の間に数回繰り返し、一般的態
度、総合評価の評定尺度を開発し、評価を得点化
*個人面接 30分
結果↑
1年次に履修した全授業科目ごとの成績をAO、一般選抜前期、後期の各選抜方式別に解析したところ、数理系の一部の科目を除くほぼすべての科目において、AO方式による入学者の成績がほかの方式による入学者の成績を凌駕していることがわかった。この傾向は特に、出席を含めた態度面の評価が重視される演習・実習系科目群において顕著だった。
担当者コメント↑
正直な感想は「こんなに大変なことやってるんだ」ということです。選ばれる側も選ぶ側も体力がいります。こんなに苦労しても入学全定員の約3割しか選抜できないんですね。私も大学は推薦入試で入学しているのでSGDは経験していますが、はるかに短い時間でした。ちなみに某医科大学は当時1泊2日泊り込みで推薦入試を実施していて、私はその長さに愕然として受験しませんでした。受験者全員に対してこのような入試ができれば理想ですが、ちょっと難しいでしょう。だとすると、今後はもっと簡単に大人数を評価できる方法があればと思いますが、態度領域だとなかなか難しそうです。厳しく評価しすぎて、定員割れも起こりそうですし。論理力評価などであれば別の方法がありそうですが。
などと考えていると、昨今話題の「日本の教育のあり方」にまで行き着いてしまいそうです。そもそも入試が知識偏重になっているからこそ、学校での勉強が知識に重きをおいたものになるわけで、地道にこのようなAO入試を増やしていくということはさかのぼって、いづれバランスのとれた人材形成につながっていくとも言えるかも知れません。(麦谷)
出典↑
医学教育 2005 36(3):141-152
原著 「医学部医学科におけるAO(態度評価)方式による入学者選抜」 −入学度1年終了段階での追跡調査結果ー
