HANDS-FDF (Faculty Development Fellowship) - イノベーション普及理論

Diffusion of Innovation Theory↑
講師:岡田唯男
このセッションではinnovation「新しいもの(考え方、行動様式、製品)」がコミュニケーション・チャンネルを通して、社会システムにおいて、時間経過のなかで広まっていく過程を学んだ。最初のキーワードは16という数字だった。これはinnovationが拡がるには、そのものに対して関心を示す割合が全体の16%に到達することができれば、そこをtipping pointとしてinnovationが急速に拡がるということである。今回の参加者は、家庭医療を志す若手医師がほとんどであったため、日本の家庭医療の将来というテーマを中心に臨床現場での経験を基に議論を行った。
そのinnovationが拡がるためには、それを規定する4つ要素がある。
1)イノベーションそのものについての性質
2)Communication channel
3)時間
4)社会システム
以下にそれぞれを詳述する。
1)イノベーションそのものについての性質は、それをさらに5つに分類することができる。
@ 相対的有利性(relative advantage):それを受け入れることに対する利点があること。
A 両立性(compatibility):既存の価値観、過去の体験と矛盾しないこと。
B 単純性(comlexity):複雑すぎずに理解や使用が容易であること。
C 試行可能性(trialability):やり直しがきくお試し期間があること。
D 観察可能性(observability):結果が目に見えること。
ここでは受け入れることで利点があるinnovationの多くが、別の要素で受け入れられないことを明らかにしてくれた。これを日本の家庭医療の普及に当てはめると、既存の開業医または内科医の立場を否定、矛盾させないA両立性(compatibility)が必要であり、家庭医療を一般の方にも理解しやすい言葉で説明できるB単純性(complexity)がinnovationの障壁の1つになっていることを議論の中で感じた。
2)communication channelとしてはMass media channelとinterpersonal channelの2つがあるが、ほとんどの人はイノベーションを科学的根拠に基づいてではなく、何らかのcommunication channelから、特にinterpersonalでの拡がりによるものが大きいということは感覚的に実感できた。
3)時間には@個人/社会で受け入れのステージ(認知、確信、決定、導入、確認)とAイノベーションを受け入れる個人や集団そのものの性質が係わっており、特に後者の重要性を感じた。イノベーションを受け入れる集団は上図で示した通り、革新的採用者(innovators)2.5%、初期採用者(early adopters)13.5%、前期多数採用者(early majority)34.0%、後期採用者(late majority)34.0%、採用遅滞者(laggards)16.0%の割合で存在する。Innovationを起こす時には革新的採用者(innovators)が各現場でのopinion leaderである初期採用者(early adopters)の理解を得られることが重要となる。革新的採用者に初期採用者を加えた割合が全体の16%となれば、そこをtipping pointにして非可逆的にinnovationは拡がっていくという。つまり組織の中での初期採用者の存在をを認識し、彼等からinnovationを拡げていくことが方法の1つであることを知った。
4)社会システムにはopinion leaders、change agents(innovation採用の決定を促進する人、物。例えば、図書館など)、change aidesなどinnovationの普及に関する仕組みを理解した。
レクチャー全体で印象に残ったことは、やはり16%という数字だった。Innovationを起こすときには組織全体に働きかけるイメージがあったが、障壁になる要素を認識し、先ずは初期採用者に働きかけることがinnovationを起こす手がかりとなることと理解した。
文責:齊藤裕之
